だが日本人は案外左傾の政党に投票することがあるのだし、新民党政権を誕生させた背景にはそういったことが重なっていた。


 こんなことは所詮床屋政談である。


 髪を切りに理髪店に行くと、決まってこういった話が出るのだ。


 別に特別なことを見たり聞いたりするわけじゃなかった。


 単に床屋で散髪してもらいながら、自然と出るこぼれ話の類である。


 車は永田町に着き、岩原が降りた。


 各局の報道陣が待ち構えていて、岩原にマイクやICレコーダーを突きつけてくる。


 一切無視し、スゥーと通り過ぎていく。


 こういった記者相手のこともちゃんと考えていた。


 さすがに長年、永田町に生き続ける人間である。


 中の勝手はまるで自分の家の庭のように知っていた。


 誰が出入りをし、どういった質問をしてくるかまでちゃんと想定済みだ。
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