俺も岩原の胸中は乱れていると思った。


 第一、政界では<乱世の岩原>と呼ばれているのである。


 その乱世が永田町にも訪れているのだった。


 俺も主がそれを覚悟で、選挙に臨むことが分かっている。


 だが、なぜ新党を結党したのか理解できない。


 訝しんでいるのだった。


 もちろん屋島では豪勢な食事を取りながら、これからの党運営などに関して、藤井たちと密談を重ねているのだろう。


 それが手に取るように分かっていた。


 単にお抱え運転手でもそういったことは把握できているのだ。


 車がものの十分ほどで屋島に着いた。


「午後十一時まで待っててくれ。あと、いつも君にはしっかり働いてもらってる。これで美味いものでも食え」


 岩原がそう言って万札を一枚取り出し、握らせる。
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