第8章
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 九月も下旬に差し掛かる頃、新民党代表選が執り行なわれ、永田町の新民党本部において国会議員の票と、各都道府県にいる党員・党友が投じた票が同時に開票された。


 そして川浪が代表に再選される。


 俺もその様子を車内でラジオを通じて聞きながら、思っていた。


 多分、岩原は川浪が総理を続投することに不満を覚えているだろうと。


 だが党内で決められたことは守るしかない。


 現に事前の予測でも川浪が圧勝することは目に見えていたのである。


 それだけ安定感があるということだった。


 確かに川浪は新民党が三年前の総選挙に臨む際、作ったマニフェストを守れていない。


 おまけに野党である社自党と組んで、増税法案を通した。


 結局、国家公務員改革などが達成されなかったのは仕方ない。


 公約に違反したことが国民を政治不信に陥れていることは分かっていた。


 だが、これから先社会保障や福祉で金が足りなくなってくることは目に見えている。
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