スイートスキャンダル
とうとう手は離して貰えないまま、海の近くの料亭に入った。


どうやら柊君が予約してくれていたみたいで、彼が名前を告げるとすぐに窓側の座敷に案内され、料理も待たされる事は無かった。


さすがに席に着くと手は離して貰えたけど、今度は向かい合って座っている事を何だか変に意識してしまって…


ずっと俯きがちのまま、次々と運ばれて来る料理に黙々とお箸を付けた。


柊君は特に何も言って来なかったけど、きっとあたしの事なんてお見通しだったと思う。


昨日までほとんど面識が無かった男性(ヒト)に見透かされてばかりなのは、何とも微妙な気持ちだったけど…


あまり嫌な気はしていない事が、何だか不思議で堪らなかった――…。


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