大嫌いなアイツ
 

はぁ、とため息をついて、レジへ向かう。


どれだけ嫌われてるんだか…。
さすがにヘコむな。
………私も吉野のこと嫌いだったし、人のこと言えないけどさ。


―――どんどん変わっていく気持ちに焦る。
今は吉野のことが嫌いなんて気持ちはなくて、この2週間、気付けば目で追っていて。


…気になるんだ。
吉野のこと。


帳簿を取り出して、お金を数える。


私って単純過ぎるのかも。
助けてもらったくらいで、笑顔を向けられたくらいで、気になり始めて…
実はイイヤツなんだな、ってわかってきて…
こんなにあっという間に気持ちが変わっちゃうなんて。


…………好きになっちゃいそう、とか。
だから、嫌われてるのが嫌、とか。


「…はぁ」


アホすぎる。


何度目かわからないため息をつき、お札を手の中でピラピラと広げながら外を見ると、片付けている吉野の姿がよく見えた。
吉野が動くたびに、電灯に照らされて髪の毛がキラキラと光っている。


…あれ、雨降ってんだ。
ふん、私にレジ押し付けるから、天罰だっ。
ざまーみろっ。


好きになりかけてる人に向かってこんな風に思ってしまう私は、ほんとにかわいくない女。
きっと、それは態度にも出てる…。
自分が嫌いになりそう。


「はぁ…」


にしても、いつの間に雨なんて降ってきたんだろう。
傘持ってきてないのに。
憂鬱になるなぁ…。

 
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