雨桜~君に唄ったLoveSong~
一章 桜下

第一話 花が種の頃、まだ夢があった.

 もう、
桜が咲いて良い時期なのに咲かない。
ここ最近、天気が悪いからなのか・・・。
如月総合病院の裏庭にある桜の下で
悩む少女が居た。
悩む少女ーー如月 桜夢(きさらぎ さくら)
桜夢は、春にしか咲かないが好きで、
その中で一番好きなのが桜であった。
でも、桜の木に来ると思い出すことがある。
それは・・・夢であった。
その夢は、歌手になることだった。
でも、その夢は父に反対され
とっくに棄てた。

...はずなのに。

時々思い出してしまう。
歌を毎日のように歌っていたあの頃の気持ちを、

-数年前-

「何っ!?歌手になりたいだとっ!!」

私は、進路のことを父に聞かれた。
正直に話すか迷っていた。
が、隠すものではないと思ったので
父に歌手になりたいと、正直に歌手になりたいと
話したのであった。

「お願いお父さん!!私の小さい頃からの夢だったの!!」
父が反対することも正直分かりきっていた。
聞く耳も持たないことも。
「父さんは絶対に許さんぞ!!お前は、如月総合病院の
唯一の跡取りなんだ!!お前が継がなくて一体誰が継ぐんだ!?」
「・・・っ。そんなの病院の中で決めればいいんじゃない!!」

--ッバシ

家の中に鈍く痛々しい音が響いた。
一瞬何が起きたのか解らなかった。
「・・っ。とりあえず、お前は家から近い
枝樹大学付属高等学校を受験しなさい。」
「・・・・はい。」


その返事は父に従うのと同時に

自分の夢を棄てたのであった。

< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop