黄昏バラッド

:雨ノ中


***


部屋の窓からはいつの間にか光が射しこんで、どこからか鳥のさえずりが聞こえてくる。

私は寝ぼけたまま、いつものくせでスマホに手を伸ばそうとしたけどふっと我に返った。


……そうだ、私はなにも持たず家を出たんだっけ。

重たい体を起こすと、そこにサクの姿はなかった。

あるのは綺麗に畳まれた布団と、テーブルに置かれたサンドイッチがひとつ。おそらくこれはコンビニで買ってきた私の朝ご飯。

そして、その隣には小さな置き手紙が置いてあった。


【バイトに行ってきます。鍵は置いていくから出掛ける時はポストに入れておいてね】

部屋にあったデジタル時計は8時過ぎ。


サクってどこまでお人好しなんだろ?

昨日会ったばかりの人を泊めて鍵まで置いて行っちゃうなんて。……私が悪い人だったらどうするつもり?

そんなことを思いながら、とりあえず部屋のカーテンを開けた。
< 22 / 270 >

この作品をシェア

pagetop