黄昏バラッド


「んじゃ、腕ならしにもう一曲やるか」

尚さんはそう言ってドラムで緩やかなリズムをとった。それでなんの曲だか分かった鉄さんはベースの弦に手をかける。

サクがふたりの顔を見て頷くと再びマイクの前に立った。


――♪♪♪……♪
♪……♪♪

いつも聞いてるサクの綺麗な歌声。ゆっくりな曲調はすぐにバラードだと気づいた。

激しかった爆音がまるで夢だったかのように引き込まれるメロディー。


……♪♪♪……。
♪♪……♪

♪……♪……。

もうひとりで歌っていたサクはいない。その姿にまた涙が出た。

サクの背中を鉄さんや尚さんが優しく見つめている。その目にも光るものが見えた。


長かったね。

頑張ったね、サク。

トワイライトはこれからだけど、サクはきっとなにがあっても大丈夫だよ。

だってサクには支えてくれる仲間と大好きな音楽があるから。

私はこの瞬間を一生忘れないようにステージに立つ3人をしっかりと胸に焼きつけた。
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