黄昏バラッド

***


次の日の朝、起きるとサクはもう仕事に出掛けていた。

私は部屋を見渡して、自分の荷物を整理した。
ここに来た時はなにも持っていなかったのに、いつの間にか私の私物が増えていた。

それをひとつずつをバッグに詰めて、久しぶりに制服を手に取った。着てみるとなんだか懐かしくてもう何年も着ていない感覚。

毎日パジャマで着ていたサクのスウェットを綺麗に畳んで、それをベッドの上に置いた。

この部屋は私の……いや、ノラの帰る場所だった。

ここで過ごした思い出があるから、私は強く旅立てる。


次に用意したのは一枚の紙。

ごめんね。やっぱり私はサクの顔を見てさよならなんて言えなかった。だってずっと傍にいたくなるから。


【サクへ】

そう書いた手紙の続きは沢山ありすぎて書ききれない。書いてる内に決心が鈍って、踏みだす勇気がなくなりそうで。

だから書いた言葉はたったの一行。


【サク、今までありがとう。いってきます】
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