黄昏バラッド


文字どおりそれは、寝ている猫のストラップ。


三毛猫、白猫、黒猫、虎猫、ぶち猫の全5種類らしい。サクは迷うことなくそのガチャポンをやり始めた。

……ガチャポンって、サクの方が子どもじゃん。


「三毛猫がいいな。うちの猫がそうだったから」

……私の名前の由来は猫でしょ。

サクってそんなに猫が好きなのかな?猫に限らずサクって動物ならなんでも好きそうだけど。


「あー!三毛猫だ」

ガチャポンの透けてるボールからは三毛猫の模様が見えた。


「ふーん。良かったね」

私のテンションは上がることなく、サクを呆れた顔で見ていた。だってこんなの高校生にもなってやらないし、そういうキーホルダー系って興味ないんだよね。


「もう1回やろーっと!」

「え?まだやるの?」

気づくとサクはもう一度ガチャポンに手を伸ばしていた。


もしかしてコンプリートする気?

サクの年齢聞いてないけど、私より年下とかじゃないよね……



「あ、また三毛猫でたよ。はい。ノラ」

サクは私にそれを差し出した。


「な、なに……?」

「おそろいで付けようよ。偶然、三毛猫2個出たし」


……そっか。サクは初めからなにが出ても2回やるつもりだったんだ。


ガチャポンのふたを開けると、小さなストラップが出てきた。もう子どもじゃないけど、たしかににこれは可愛いかも。


「……スマホがないから付ける所ないけど、貰っておく」

私がそう言うと、サクは嬉しそうに笑った。
< 40 / 270 >

この作品をシェア

pagetop