黄昏バラッド
暫くすると見覚えのあるバイクが私の前に止まった。
「ノラちゃん。俺、俺」
言われなくても分かります。そんなにギラギラしたスカジャンを着てるの鉄さんぐらいだから。
「はい、乗って」
鉄さんは後ろからヘルメットを取って私に投げた。
「乗ってって……」
な、なんで?話をするならここでいいじゃん。
「どうせ暇でしょ。乗りなよ」
その言葉にちょっとカチンときたけど、暇なのはたしかだ。このまま家に帰っても私はサクを待つことしかできない。
私は考えた末に、鉄さんのバイクに股がった。思えばバイクに乗るのはこれが初めてだ。
「……よし。しっかり掴まってろよっ!」
鉄さんはそう言ってバイクのエンジンをかけて走り出した。思ったよりもスピードが早くてちょっと怖い。
私は自然と鉄さんの腰に掴まった。
鉄さんの背中は大きくて、男の人って感じ。サクに触れたことはないけど、きっと全然違うんだろうなって、サクと鉄さんをなぜか比べてしまった。
鉄さんはバイクを走らせながら私になにかを言ってたけど、通りすぎる風の音がうるさくて、それを聞き取ることはできなかった。