黄昏バラッド



「ただいま」

5時過ぎにサクが家に帰ってきた。

そしていつもとは違う雰囲気にすぐ気づく。


「どうしたのこれ……」

テーブルには私が作ったカレーとサラダ。レパートリーは少ないけど、作るのは嫌いじゃない。


「今日材料買ってきて作ったんだよ」

今度本でも買って練習してみようかな。


「そう……なんだ」

サクは驚いてるのかテンションが低い。もっと子供みたいに喜んでくれると思ったのに。


「……冷めない内に食べようよ。味は美味しいか分からないけど」

私は少しふて腐れながらカレーを口に入れた。


私だって本当は迷ったよ。

こんな風に料理作ってサクを待っていたら、なんか私たちの関係じゃない気がして。

彼女でも彼氏でもないし、一緒に住んでるけど同棲とは言いたくないし。サクは私を本当にペットみたいに思ってるのかもしれないけど、ペットだって猫だって恩を感じるんだよ。

こんな私がサクのために料理を作ったらダメなの?

自分の居場所を作るために必死になっちゃダメなの?


「……ノラ?」

気がつくと私の目からは涙がでていた。


こんな自分が大嫌い。

サクの前で泣いたって迷惑をかけるだけなのに。
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