【完】運命は罠と共に
思いがけない質問に、呆然として、なんともまぬけな声が出てしまった。


なぜそう思ったのかさっぱり分からない。


いや、本当に。なんで、そんな風に思われたんだろう。



「その表情でなんとなく分かったけど、違うみたいだな」


ホッとした様に笑った田中さんに、何度も無言で頷いた。


同棲なんてするはずない。


ここに住むようになったのは、恋なんてしないって決めた後だった。


だから恋人と呼べる人もいないのに、誰と同棲なんてすればいいんだろう。




「さっき寝室に運んだときベッドはダブルで、しかも実家近いのに1人暮らししてて、部屋も1人暮らしにしては広いし、おまけにこの男物の服だろ?色々勘ぐるよ」


あー、そんな風に捕らえられていたのか。


どんだけ寂しい生活してたんだろうね、私って。


でも私が何かやらかしてしまったわけではなさそうで安心した。


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