私を壊して そしてキスして

「ごめんなさい。迷惑ばかり……」


きっとこの仕事だって、昨日できなかったからに違いない。
眠れない私のために、ずっと付き合ってくれた彼は、私よりも寝不足なはず――。


「迷惑な訳、ないだろう。
好きな女の泣き顔を見たら、守ってやりたいって思うのが男だ」


冗談ぽくそう言うけれど、もしかしたらそれは本音なのかもしれないなんて思う。


「コーヒー、飲むか?」

「私、おかわり淹れます」


彼は少し濃いめが好き。

一緒に仕事をしていた時、それを飲みながらパソコンを操る彼がとても素敵だった。

何時か、あんなふうに仕事ができるようになりたいって、そんな憧れも抱いていた。


けれど、あっさり仕事を手放してしまった。
それが一番幸せだと信じて。



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