私を壊して そしてキスして

次々と運ばれてくる料理は、手を付けるのがもったいないほど綺麗に盛り付けられていて――。

彼が今日、ここを選んだ理由が、その後分かった。


「菜那」

「――はい」


デザートとエスプレッソが運ばれてきたとき、彼が私の目を見て真剣な顔をする。


「仕事もひと段落した。といってもまた新しいスタートだが。
プライベートも、きちんとしたい」

「えっ?」

「結婚、しよう」


彼がそう言いながら私に小さな箱を差し出した時、あまりに突然の事で鳥肌が立ってしまった。


「菜那? 息をしろ?」

「――はい」


彼の一言で、やっと酸素が肺まで届いた気がする。


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