私を壊して そしてキスして
「おぉ、来たか」
「あぁ、誰かさんが俺たちの旅行を短くしてくれたからな」
「悪かったな。どうしても今日、お前がいるんだ」
平井さんが、私にも笑顔を向けてくれる。
自分のことではないけれど、どうしてもなんていわれる翔梧さんのことが、ちょっと誇らしい。
翔梧さんは、今までも裏で平井さんのサポートをしていたらしい。
別の会社にいるわけだから、一度も表舞台に出たことはないらしいけれど、二人で知恵を絞ってやってきたんだって、平井さんが教えてくれた。
「菜那ちゃんも、ごめんね」
「――いえ」
「それで、俺たち……」
「えっ? 早くないか?」
「お前達みたいに長い春は必要ないの」