帰る場所[短編]
帰る場所

錆び付いて開きにくくなっている郵便受けの蓋を、ガタガタと音をたてながら、やっとの思いで開ける。

中を覗くと、そこには真っ暗な闇が広がっていた。


入っている確率のほうが低い。

そう思ってはいても、毎日、何年経っても、この瞬間はどうしようもないくらい悲しくなる。


小さく溜め息をついて、肩にかけ直した鞄の重みが、ずしりと身に染みた。



狭い階段を上がり、電球が切れてしまったのか、電気のつかない薄暗い廊下の突き当たりが、俺が大学時代から、かれこれ8年近くお世話になっている部屋だ。

部屋に入ると、冷え切った床に途端に熱を奪われて、慌てて風呂に入ろうとした。

なのに。


「…。お湯でない…。」


また給湯器が壊れたらしい。先週直したばかりなのに。

もう古いアパートだから色々ガタが来てもしょうがないんだけど。

さらに沈んだ気持ちを引きずって、取りあえず水で顔を洗った。
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