バイナリー・ハート
「こいつはベルじゃない。ランシュ=バージュだ」
「え? だって、カード……」


 ユイの瞳が困惑に揺れる。
 他人のカードが使えない事は、異世界人のユイも知っているからだ。

 ランシュは全く悪びれた様子もなく、平然とユイに笑顔を向ける。


「ごめんね、ユイ。あれ、おばあちゃんのカードなんだ。騙すつもりはなかったんだけど、オレのカード使えないからさ」

「余計な事は、しゃべるな!」


 ロイドが厳しく制すると、ランシュは口をつぐみ、おどけたように肩をすくめて見せた。


「奥で話そう」


 ロイドはランシュの腕を掴み、店の奥へ向かう。
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