バイナリー・ハート


 あの二人は、電話を切った後も、しばらく怒鳴り合っているような気がする。


「先生、早く帰れなくなったんだね」


 隣に座っていたランシュが、心配そうに声をかけてきた。


「うん……」


 元々結衣のわがままで、忙しいのに無理して、早く帰ろうとしていたのだ。

 予定が狂う事はあらかじめ考えておくべきだったのに、朝から手放しで浮かれていた分、奈落の底にたたき落とされたように落胆は大きい。

 初めて目にした、職場でのロイドと副局長の様子が、それに拍車をかける。

 自分は何も出来ないのに、彼女は側にいて、常にロイドを支えている。
 そこに恋愛感情がなくても、たまらなく彼女がうらやましい。

 こみ上げてくる嫌な感情に胸が詰まりそうになり、必死に堪えていても涙が溢れてきた。
< 156 / 263 >

この作品をシェア

pagetop