バイナリー・ハート


 ロイドはフェティを見上げて、少し笑みを浮かべた。


「わかった。そうする。すまない、フェティ。恩に着る」
「そう思われるのでしたら、体調管理には気をつけてください」


 涼しい顔でそう告げて、フェティは局長室を出て行った。

 書類に視線を落としたものの、今朝のランシュとのやり取りを思い出し、再び気が重くなる。

 ロイドの気が塞いでいるのは、体調不良のせいではない。
 確かに疲れは溜まっているが、倒れるほどのものでもない。

 これから自分が下さなければならない決断を思うと、気が重くなるのだ。


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