バイナリー・ハート
「ユイか」
「え……」
顔を上げたランシュの瞳が、困惑に揺れる。
ロボットである事を忘れさせる、その複雑な表情に半ば感心しながら、ロイドは言葉を続けた。
「ユイと家族になりたかったと、おまえは言った。ユイに対して特別な想いがあるから、そう思ったんだろう?」
ユイを見つめるランシュの視線に、ロイドはいつも心を乱されていた。
それは復讐の標的を見定める目ではなく、慈しむような優しい眼差しだった。
ユイを安心して油断させるために、そんな表情を作っているのだと思っていた。
だから全く警戒していない、無防備なユイに不安になった。
けれどゆうべ、話してみて確信した。
あれは恋する少年の目だったのだ。