大地主と大魔女の娘
第二章 森の村の祭り

森を恋しがる娘



娘はあまり眠れていないようだと報告があった。


 いつも夕食時には船を漕ぎ出す様子から、あまりうまく寝つけてはいないだろうなと予測はしていた。

 様子を窺いにカルヴィナの部屋を訪れた。

 まだ眠そうなら、無理に起き出さずとも良いと伝えるためにだ。

 リディアンナは待たせれば良いだけの話だ。

 自分自身で驚く。

 何をわざわざ俺が訪れる必要がある?

 侍女に一言命じれば澄む事だ。

 今日もこれから仕事を控えている。

 何も余計な仕事を増やす理由は無いではないか。

 そう自身に問い掛けてみたが、気がつけばすでに魔女の娘の部屋へと足は向っていた。

 カルヴィナに用意した部屋を一階から二階へと移動した。

 菓子屋の階段を下りる様を眼にして決めた事だ。

 おかみはこちらを物言いたげに見下ろしていた。


 お嬢ちゃんにはこれくらいしないと、また逃げられちまうよ。


 そう言っている様に聞こえたから不思議だ。

 カルヴィナは俺から逃れる事を諦めていない。

 ただひたすらに俺への債務を払いきり、身も心も自由だった森へと帰ることを望んでいる。

 恐らく女同士の話で、おかみに導き出された本音がそれなのだろう。

 カルヴィナの、若さ特有の勢いを舐めて掛かってはいけない。

 それを思い知った一連の出来事に、俺は少々過敏になっているようだと認めるしかない。


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 廊下は長く、階段は嫌というほど多い。



 これで少しでも逃げ出す気が削がれれば良いが。


 それでもあの娘なら果敢に挑むかもしれないという当初の予感どおり、あっさり実行された。


 それでも時間稼ぎになってくれればそれで良いと思う、俺の自己満足だ。


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