大地主と大魔女の娘
怖い! 怖い!
……ウォン!
……ウォン! ウォン!
………… ウォン! ウォン! ウォン!
背後から犬の声が迫ってくる。
それから逃れようと必死で駆ける。
だんだん犬達の吠える声は大きくなってきている。
恐怖に駆られて足がもつれる。
追いつかれたら終わりだ。
そう。
終わりだ――。
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思えば思いっきり自分の足で走ったのは、あれが最後だった。
そんな事をぼんやり思いながら、薄れ行く闇の中で身体を起こした。
夢を見て泣いてしまったらしく、少し頭が重たい。
振り切るように瞬くと、出し切れていなかったらしい涙が滴った。
ウォン! ウォン! ウォン! ウォン! ウォン!
耳に届いた犬の鳴き声に、自分でも驚くほど身体が跳ね上がった。
「あ……っ、ほんもの?」
まだ夢を見ているのか、それとも現実の事なのか。
本気で迷った。
しばらく怯えながら耳を澄ましてみて、今日はあの猟犬たちの出番だという事を昨夜聞いていたことを思い出す。
今日は狩りに森へと入るそうだ。
私には関係ない話だとただ聞き流していた。
なるべく部屋から出るなときつく言い渡されてから、早いものでもう十日以上経っている。