大地主と大魔女の娘


「……。」

 確かに一理あるだろう。


 でも、私が目の前をよぎったら不吉だろう。

 これから狩りに出向こうという矢先に、出ばなをくじくような真似をしたくないのだが?

 とにかく着替えて、見送らねばならないらしいので仕度をした。

 お姉さんにいつもより少し厚手の上着とスカートを渡され、着替えを手伝ってもらった。

 もう季節はすっかり秋だ。

 まだまだ暖かいと思っていたが、だんだんと冷えてきている。

 お姉さんは少しでも暖かい衣服をと、用意してくれていた。

 ジルナ様とリディアンナ様が用意してくれた物だ。

 それに少し手を加えて、洗ってくれていたものを取りに行っていたから、今日は少し遅れてしまったそうだ。

 申しわけありません、と謝られて恐縮してしまった。

 何故、私に謝る必用があるのだろう?

 とんでもないと思ったから、こちらこそすみませんと謝った。


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 さわやかに晴れ渡った空模様に、吹き抜ける風が心地良かった。

 少しだけ、夏の頃とは違うきんと冷え始めた空気が肌をさする。

 地主様はすでに馬に乗られていた。

 エルさんも馬に荷を積んでいるところだ。

 他にお付の人が一人と、馬が一頭。

 その周りを猟犬たちが五匹も吠え立てていた。

 尻尾を千切れそうなほど振っている。

 ショールを被り直して、どうにか視界を遮るようにした。

 怖い。

 近付きたくないがお姉さんに付き添われて、何とか側まで行った。


 もちろん、充分に距離は取ってある。


 緊張しつつもぼんやりと、忙しそうな地主様を眺めていた。




 
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