大地主と大魔女の娘


 名乗りあってから、暇(いとま)を告げるとやんわりと拒否された。

「まずは着替えて、朝食にしましょう? ね? 私と一緒は嫌かしら」

「そんな事ありませんが、恐れ多いです」

「嬉しいわ。じゃあ早速、着替えましょうね。さあ、男どもは出て行きなさい!」

 びしりと扉へと指差され、二人は素直に出て行った。


 パタンと扉が閉まったのを見届けてから、ジルナ様はそりゃあいい笑顔で微笑み掛けて下さった。


 少し怯んで、引きつった笑顔で何とか応えたつもりだ。

 ジルナ様は私を慎重に立たせると、うきうきと鏡の前に引っ張っていく。

 鏡の中で虚ろな瞳とかち合った。

 泣いたから瞳は赤く、目蓋は腫れている。

 黒い髪はぱさついて、まとまりも無い。

 頬はやつれ、目の大きさだけが嫌に目立つ。

 唇もひび割れていた。

 全体的にひどい有様だった。


 久しぶりに自分を見た気がする。
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