大地主と大魔女の娘

思いがけない客人



 最近、地主様のお許しをいただいて、お庭の隅っこに場所をもらった。

 そこはそこそこ日当たりが良くて、水はけも良い。

 かと言って日が強く当たりすぎる事もないのは、近くに大きな木があるからだ。

 だから本当に加減の良い日当たりで、心地が良い。

 私が心地よく感じると言うことは、植物たちにもそうであるとも言える。

 きっとこの大地の生命力を感じて健やかに伸びるだろう。

 そんな薬草達は素晴らしい薬効が期待できる。

 最高だ。


 しかも井戸が近くにあり、作業がしやすい。


 まさに魔女の畑にうってつけの場所をいただけた。


 ここの所、日の出と共に起き出しては、一番に畑に向かってしまう。

 そこで摘んだ新鮮な薬草を厨房に届けて、お茶や料理に使ってもらう。

 それを地主様への朝食としてお出しするのが、ほぼ日課になりつつある。


 どうか地主様の活力になりますように。


 植物たちよ、力を貸して。


 そう願いながら畑を見渡して、一番光って見える葉っぱを摘む。


 少し前までは、おばあちゃんが元気でいられますようにと唱えていたのだから、不思議なものだとも思う。


 ささやかだが、魔女の力を発揮できて満足だった。


 お祭りから何度か森の家に帰らせてもらって、苗や種を取ってきたかいがあった――。


 戻りたいのだと訴えたところ、ものすごく何とも言えないお顔をされてしまった。
 眉根が寄り、不機嫌ともまた違う不穏さが漂い、非常に恐ろしかった。


 長い沈黙の後、地主様はゆっくりとこちらを見てくれた。


 そうして森の家には地主様が一緒でなければ、戻ってはならないと条件出されたのだ。

 そうでないと色々と大変らしい。

 そういえば菓子屋のおかみさんも、似たような事を言っていた。

 地主様の御そばにいると言うことで、私に目を付ける人も出てくるかもしれないのだ。

 
 地主様はお金持ちだ。

  
 もしも誘拐されたら、身代金を要求されたりする可能性も出てくる。

 そうなったら、地主様に迷惑をかけてしまうだろう。

 そんなのは嫌だ。


 だから、一緒に。


「……。」


 一人、畑仕事をしながら、ほてった頬を撫でてゆく風が嫌に心地よく感じてならない。


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