大地主と大魔女の娘
 
『エイメリィ』とでも呼んでやれば良いのだろうか。

 そうしたらこの娘は笑顔を見せるのか?

 リヒャエルに『エイメリィ』様と呼ばれて、くすぐったそうに笑い声を上げていた。

「……。」

 何故かそこで不愉快だと思った。

 無性に苛立つとでも言えばいいのか。

 不可解だった。

 見下ろす娘はよく眠っている。

 ふと気が付けば、娘の口元のほくろをなぞっていた。

 そのまま首筋をたどる。

 鎖骨の下、胸元にもほくろがあった。

 それがかえって白い肌を際立たせているようにも見えた。

 ―――娘はよく眠っている。

 ・。:*:・。・*:・。・:*:・。・:*:・。・


 コ・ココン! という軽やかなノックと同時に扉が開け放たれていた。

「レっ……!」

 姉が何か言葉を発しようとして、すぐに慌てたように引っ込めた。


 おそらく発されるはずだった、罵りの言葉の代わりにクッションを顔に当てられたが。
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