大地主と大魔女の娘

 バタンッと扉が開け放たれていた。

 地主様が客人の横っ面を殴り飛ばしたからだ。

 当然の事ながら、抱えられていた私の身体ごと吹っ飛んだ。

 浮遊感に目を閉じかけたが、次の瞬間には驚きから目を見開いていた。

 地主様は客人の腕の緩んだ隙をついて、私の身体をもぎ取るようにして抱きかかえてくれていた。

 そしてすぐさま、椅子に腰掛けさせてくれたのだ。

 地主様は私に大きな背を向けて、怒りの声を客人に鋭くぶつける。

「スレン、外に出ろ」

「言われずともそうするよ。またね、フルル。ボクは諦めないからね」

(諦めない? 何を言っているの、この人)

 ざあっと体中の血が引き下がった感覚に、大きく身体が震え上がった。

「オマエはしばらく部屋から出るな。そして余計な事をするな」

 振り返らずにカラス風情がと吐き捨てられたのが、耳に届く。

 咄嗟に頭を下げて深く詫びる。

 視界の端で彼の表情が歪むのが見えた。

 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*::・。・


 普通だったら不興を買った召使いは、急いで退室するなりするのだろうが、いかんせん私の足では時間がかかる。

 だからか。

 彼のほうが出て行った。

 そういう事かもしれない。

 杖は――?

 杖は厨房に立て掛けたまま、忘れてきていた。
< 47 / 499 >

この作品をシェア

pagetop