シュガー&スパイス


それでも、チラッと見ただけで、まるで興味なさそうに視線をそらした千秋。

そんな千秋を見て、彼らはその表情を歪めた。



「恥ずかしくないのかね
血の繋がりもないのに後継者気取りでよ」



え?
血の繋がりがないって……。


その大きな声に、周りにいた人達も立ち止ってこちらを見ている。


な、なに?


千秋を見上げても、あたしの角度からその表情を確認する事は出来ない……。



「女なんか連れて、どうかしてるぜ」



その声にハッとすると、今まで千秋に向けられていた視線が、あたしをとらえていた。



「おい、アンタ。
コイツの金が狙いかもしんないけど、無理だから。
千秋に、そんな資格ないからな。っははは、残念だったなー」



はああ?

お、お金?



「顔がこれだろ?顔と家柄に騙されて近寄ってくる女、わんさかいるもんな」

「そうそう。 でも実際跡取りでもなんでもないのに。不憫だよなぁ」



千秋が、そんな事利用してあたしを連れてると思ってる?

さっき弟のためって言ってたのを思い出す。



成り行きを黙って見守っていた周りの人たちも、クスクスと笑い始めた。


……む。
なにこれ! みんなそう思ってるって事なの?

親戚でしょ

家族なんでしょ?



ガバッと顔を上げると、そんなあたしに気づいた千秋がこちらに視線を落とした。



ねえ、千秋……
千秋もなにか言い返したら? お金なんかじゃないって、みんな誤解してる……。



じっと見上げていると、千秋は眉を下げて少しだけ笑って見せた。



「……ごめんね?ほら、行こ。もう用は済んだ」




小さくそう言って、あたしを促すように歩き出した。





―――千秋?



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