シュガー&スパイス

古い木製の扉の奥に、キラキラ光るステンドガラス。


マリア様が見守るその下で
天使だと見間違えてしまったほど、綺麗な男の子に会った。


薄暗い教会の中で出会った彼は、あたしに気付くと驚いたように、そのまあるい瞳を見開いた。


そして、ふわりとほほ笑むとこう言うんだ。




『……やっと会えた』





七色の光が差し込む、神聖な場所。

響くその声色は、ハスキーで、あたしの鼓膜を震わせ
小さな胸にスンと落ちてきた。




『どうして、泣いてるの?』





近づいてきた彼はそっとあたしの頬に触れて、首を傾げた。
見下ろすほど小さな彼のその顔は、まるで女の子のようにも見えた。


……あったかい手
幼く見えた彼の手が、以外にも大きく感じて、胸がトクンって震えた。

そう思った。



どうしてあの時泣いていたのか。



ああ……、そうだ。

あの時は、確か……
引っ越すのが嫌だった。


6歳まで住んでいたあの場所から
幼いながらも離れたくなかったんだ。



だから、家を飛び出して……
道に迷って……


それで、あなたに出会えた……。



< 2 / 354 >

この作品をシェア

pagetop