シュガー&スパイス



「……しの……みや?」




そこには確かに“201号室 篠宮千秋”と書いてあった。




「201?」


……って、やだ!
お隣じゃないっ。


あぶなーい。勝手に人の荷物開けちゃうとこだった……。

ひとり胸をなでおろして、左隣を見た。


そっか……誰か引っ越してきたんだ。




ヒールを脱ぐと、なんともいえない解放感に包まれた。


さっとシャワーを浴びて、むくみとりの靴下をはく。
パックをして、大好きな香りのアロマをたいた。





――カシュ



涼しげな音をたて、缶ビールのプルトップを開けてから、お気に入りのモスグリーンのソファに腰を落とした。






「いただきまーす……んぐ、んぐ……プパァ」



やっぱり、ビール美味しいっ

こんな姿、英司には見せらんないよね。


もっと女らしくワインとかの方が魅力的かもしれないけど……。





『…………』

『…………』





……あれ?

その時、何か聞こえた気かして、あたしは思わず固まった。



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