シュガー&スパイス
必死に鍵を探していた手首が掴まれて、そのまま体も一緒に固まってしまった。
なんかすごくいい香り……。
これって、シャンプーの香りだ。
無造作にセットされた真っ黒な髪。
その前髪の間から、千秋は真っ直ぐにあたしを見下ろす。
どぎまぎして、何度も瞬きを繰り返してしまう。
なに? なんなの、これ。
そして、不意に千秋の眉がクイッと上がった。
視界が何かで塞がれる。
へ?
「探してるの、これ?」
目の前をよく見ると、それは見覚えのあるうちの鍵だ。
「え? なんで千秋が……」
「なんでって、今鞄から落ちたんだけど」
え、いつの間にっ
いくらなんでもぼんやりしすぎだ。
「あ、りがとう」
ぎこちなく受け取ると、千秋はフワリと髪を揺らしながら笑った。