夫婦の始まりは一夜の過ちから。
こんな不景気の中で高卒の私を何処が雇ってくれるという?
一流企業でもなく二流でもない三流会社に勤めてる経歴しかない私を。
だから例え苦手な役割が私にきたとしても、ハイ喜んで!の意気込みで同行するしかないのだ。
それに接待に付き添うのは初めてではない。
だから、大丈夫。
「本当に大丈夫?」
「へ?」
「口に出てた。今日の接待相手春風さんだよね?」
本当に悲惨だわ、と同僚であることみはコロッケを頬張りお気の毒にと付け足した。
「夏芽と働くのも今日が最後なのか。はぁ。寂しいなあ。研修からずっと一緒だったのに。面接のときだって隣だったしね」
「ちょっと!縁起でもない事を言わないでくれる?」
「ただありのまま事実を述べてるだけ」
「もう!頷けるからイヤなのにー」
完全否定できることならまだしも可能性があるからこそ言わないでほしい。