夫婦の始まりは一夜の過ちから。
「それで泣いちゃったの?」
「だって…」
「うん」
「悲しいんだもん。認めてもらえなくて」
私の頭と背中を撫でていたアイドルの手がピタリと止まり、抱き着く私の身体をはなす。
どうして?
そう思いながらアイドルの顔を見上げると、私と正反対の表情をしていた。
「なんで笑ってるわけぇ…?」
「んー。それは今が凄く幸せだからだよ」
今が凄く幸せだからなんて…
結婚を認めてもらえなくて幸せなんて、アイドルは私と結婚したくなかったのかな?
「夏芽ちゃん。ちょっと聞いてくれる?」
「聞きたくない」
怖くてアイドルの言葉が聞けない。
「聞かなくていいから見て、ね?」