夫婦の始まりは一夜の過ちから。



いつもは玄関先までしか見送らないけど、今日はしっかりエレベーターが閉まる寸前まで。


その瞬間も壱はあまり笑顔じゃなかったけど、ね。





「早く帰ってきて…」





バタンと玄関の扉を閉めながらそう呟く。


私が大晦日一人になる事を心配し実家に帰ったら?と何度も提案する壱に何度も何度も頭を横に振った私。


その理由はここでじゃなきゃイヤだと思えたから。


そりゃあ、一人で年越しするのは寂しいけど…


私は例え寂しくても壱と過ごすこの部屋で新年を迎えたいと思えた。





「よし、やるぞー」





無駄に声を出してスタスタとキッチンへと向かい冷蔵庫を開ける。


何かしていれば寂しさなんて吹き飛んでいく。


だったらずっと何かしていればいい。



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