夫婦の始まりは一夜の過ちから。
□Existence






ガチャリと音を経てながら玄関の扉を開いた途端に、グレープフルーツの香りが鼻を掠めた。


それは私が大好きでここで暮らし始めた時から一度もかえる事がなかった部屋の消臭剤に香り。


それが何よりも家に帰ってきたと実感し、落ち着いてきたはずだったのに…


今の私にはグレープフルーツの香りがしても、心から落ち着く感がしない。





「うー」





だらだらとベッドに直行し顔からダイブ。


――結局ホテルのロビーで聞けばアイドルがホテル代を払っていたらしく、エレベーターに乗りながら出した財布の出番はやってこなかった。


なんか複雑。


これじゃ、まるで私がアイドルに借りを作ってしまったみたいな気分で。


どうせなら私が払った方が断然良かったのにと思う。



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