泣いていたのは、僕だった。

side真司



―真司side―


夢見が悪い。

ここ数日、目が覚めると額に汗が浮かんでいる。



嫌なざわつきがする。


千明の時と同じだ。


第六感が騒いでいる。



「……もしかして僕は、超能力でも持ってるのかな?」


自分の呟きに思わず笑った。

そんな訳ないのに。



ベッドを抜けて部屋を出ると、創くんが朝食を作っていた。



「おはようございます。今日は早いですね?」
「うん。目が覚めちゃって。」
「コーヒーでいいですか?」
「うん。」


手早く用意されたコーヒーに口を付ける。


「ん。美味しい。」


煙草に手を伸ばしかけて、やめた。


せっかくのコーヒーが美味しくなくなると思ったから。



「あ、卵切らしてたみたいです。ちょっと買ってきますね。」
「………僕が行こうか?」



そう思わず言ってしまったのは、夢見が悪かったせいだ。



「珍しいこと言いますね。でも大丈夫ですよ。それに真司、寝起きじゃないですか。」



行ってきます、と言って創くんは家を出ていった。


その背中を妙に追いかけたくなって、僕はしばらく玄関を見つめていた。


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