泣いていたのは、僕だった。

side翔一



―翔一side―



その日、真司は煙草が切れたとコンビニへ行った。


「ったく、ちょっとは禁煙しろってんだよ。」
「あれは無理でしょうね。中毒みたいなものでしょうから。ね、隆?」



咎めるような創の口調に、隆の背中が反応する。



「隆、言われてるぜ」
「ほっとけ…」


笑っているとマナーにしていた俺の携帯が震えた。


ディスプレイには“皆保”の文字。


「おっちゃん?珍しい……」


仕事の内容はいつも真司の携帯へ連絡が入る。
連絡先は知ってたけど、実際連絡くるのって初めてかも…。



「もしもーし」
『おう、翔一。元気だったか?』
「元気だよ。珍しいじゃん、俺の携帯掛けてくるなんて」
『いや、まぁな。』



おっちゃんにしては歯切れが悪かった。



『今、真司の奴ぁいるか?』
「いねーけど……煙草買いに行ってる。なんで?」
『仕事の依頼なんだが……今回は真司の耳に入れないでもらいたいんだ。』


いつもよりトーンの低い声に、俺も釣られて声を潜めた。



「分かった。内容は?」
『暗殺組織の抹消。』



やけにハッキリと言葉が聞こえた。



「物騒な話じゃん。」
『都内で起こってる連続殺人知ってるか?』
「ああ、知ってるよ。ニュースでやってるし。」



目の前で流れているニュースは、まさにその話題だった。




『犯人は皆バラバラなんだ。ただ、全員に共通するのがある組織団体。』
「それが暗殺組織?」
『そうだ。組織の連中は“DJSI”って呼んでるようだ。』
「ふーん…意味わかんねーな。」



笑うと電話越しにもおっちゃんの笑い声が聞こえた。



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