御劔 光の風2
「私には…因縁の人を倒す為だけに陛下が存在しているように聞こえました。その人を倒した、そのすぐ後に自分の胸を刺さなければいけないと。」

俯いたリュナの表情はカルサからは見えない、しかしその両手は固く拳が握られている。

彼女の感情が高ぶっていることはすぐに分かった。

「ならば、倒した後に私や千羅さんたちが陛下の剣を止めればいいじゃないですか。」

声に力がこもっている。

彼女は怒っているのだろうか、そんなことをぼんやり思いながらカルサは否定の言葉を吐いた。

「それは出来ない。」

カルサの言葉にリュナの肩が跳ねる。

「例え刺し違えたとしても俺が後に倒れることはない。」

リュナは目を大きく開いて言葉の処理に困っていた。

こんな乱れた感情では冷静に判断も理解することも出来ない。

そして戸惑っている間にカルサの次の言葉が来たのだ。

「俺の命が、彼を倒す唯一の武器だからだ。」

突き刺さるような言葉にリュナは顔がゆっくりと上がる。


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