あの子の隣に座るコツ!
HR後の、休み時間。



「すごかったよ。順位が貼り出されたときの、クラスの反応」



前の席からやってきた啓一が、空席になっている隣の机に座り、にこやかに話しかけてきた。



「バカにしてんだろ」

「とんでもない。驚いたけどね」



人畜無害な笑みを浮かべて、啓一が言った。



「俺が一番驚いたよ。見てたろ、俺のリアクション」

「はは!あれケッサク」


手を叩いて啓一が笑う。
ムカつくが仕方ない。


実際俺が逆の立場だったら笑ってたしな。



「この調子でお前も抜いてやるからな、啓一」

「はは。怖い怖い」



「大吾」

「お、アリサ。おはよ」



アリサもやってきた。コイツもかなり順位を上げたよな。ま、もともとそのくらいの実力なんだろうけど。



「まぁ…あれよ」

俺と目を合わさないまま、アリサが呟いた。



「なんだよ?」


「あんたにしては…その、頑張ったんじゃないの」



それを見て、クスリと啓一が笑う。



俺も笑う。



「次のテストでお前も抜いてやる」

「はっ?なにそれ。寝言言ったの、今?寝てるの?」



あ、きたきた。
いつものアリサだ。



「いけるさ。俺はやればできる子らしいことが、今回分かったからな」


「あんたのカニミソギッシリ頭じゃ無理。“バカ席”下位はカニミソ同士の戦いなんだから。あんたはカニミソ界でトップに立ったに過ぎないのよ」

「…なんのSFストーリーだ?」



「とにかく、このままちょっとずつ成績上がってくといいね」


啓一がまとめるように割り込むと、1限開始のチャイムが鳴った。



先生が入ってきて、着席を促す。


「じゃあ、また後で」


片手をひょいと挙げて、啓一は前の席へと歩いて行った。


「おう」


俺も手を挙げて、啓一を見送る。


「じゃあな、アリサ」

「死ね」



アリサもいつも通りの挨拶を返して、席へ戻って行く。


当たり前だが、席が変わっても2人の俺への扱いは別に変わらない。



うん、
悪くない。


俺の学生生活も、そう捨てたもんじゃない。


窓から校庭を眺めながら、そう思う。




と、

隣の席に誰かがストンと座った。
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