あの子の隣に座るコツ!
なんでだろうな。



こんなデカイ学校作ったのは。



この学校が無駄に広いせいで、教室から職員室に行くだけで結構な重労働になる。



まァ、いろいろあるんだろうな、大人の事情というやつが。



「失礼しまぁす」



職員室の扉を開けると、それこそ体育館みたいな広々としたフロアが目に入る。



生徒数が4500人とあれば、それだけ教師の数も半端じゃないからな。



手近な先生に、逢坂先生の居場所を聞く。



職員室の奥の方に、いるらしい。にっくき逢坂。12枚も反省文書かせやがって。



「お、日比野。こっちだ。書けたか?」



罪の意識のカケラすら、この男からは感じられない。“最バカ”なんて、騙されて当然、みたいな。あんまり卑屈になっても仕方ないが。



「書けたか?じゃないっすよ!反省文12枚の校則とか嘘でしょ!」



「アレ、本気にしたのか?」



「普通するでしょ!自分の立場分かってます?生徒指導ですよ!?」



なんだか、全然俺の怒りが逢坂先生に届いていない気がする。



「悪かったよ。だが、ちゃんと12枚書いて来るとは見直した。そこ置いとけ。検閲はナシ。カレーの作り方だろうと、俺の悪口だろうと、12枚書いたこと自体に意味がある」



ゴツい顔をほころばせて、逢坂が語る。そんな顔されちゃあ、怒るに怒れない。


「もう遅刻するなよ。夜は早く寝ろ。8時に起きりゃあ十分間に合うはずだろ」



「とりあえず、連続にならないよう頑張ります」



「お前なぁ…まァいい。行ってよし!」




「あざすっ」



GOサインをもらって、職員室を後にする。



と、



「東條くん、大体いいんだがねぇ」



粘っこい嫌ァな声が、俺の耳に届く。



「ちょっとここの表現がネイティブじゃないかなぁ。ま、大体いいんだけどね。君だから言うんだけどね」



“クラス首席”の東條さゆみさんの前で何やら話しているのは、
英語担当の、石川。
学年主任。
7対3にきっちり分けた頭髪と脂ぎった顔面はもちろん、
何だろう、あのしゃべり方は。
生理的にキツい。



こっちから東條さんの表情は読み取れない…いや、東條さんは元々あんまり表情豊かな人ではないけどさ。



それにしても、後ろから見てもなんかオーラあるな、東條さん。
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