ヤサオトコ

 「いいや。そうやないんよ。彼、お腹の調子でも悪いんか」


 沙幸が、田原に栗崎のお腹の具合を尋ねた。


 「ひどい下痢ですわ。それも、最近、毎日ピーピーですわ」
 「ああ、やっぱり」


 「ここだけの話ですけど、あいつ、おむつしてますのやで」
 「そんなに、ひどいのんか」


 「わしらも、それで、弱ってますのや」
 「原ちゃん。ありがとう。よう、わかったわ」



 沙幸は電話を終えた。



 (嘘や無かったのか)

 (あのイケメンが、ピーピーメンとはなあ)




 (おむつ姿か。可愛いやろな)




 沙幸は、征中丸を見ながら栗崎の事を思っていた。
 思えば、思うほど、沙幸は栗崎の事が---。


 無性に、可笑しかった。
 無性に、可愛かった。
 無性に、愛しかった。



 「許して上げるわ」



 「私の坊や」





 「次は、しようね」





 沙幸が窓の向こうを見ながら呟いた。
 遠くで夜景が、星のようにきらりと煌いた。












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