ヤサオトコ


 その時、ブレザーにネクタイ姿の20代の男が現れた。
 男は旅行カバンをぶら下げ、ベンチを物色している。


 男はリストラでもされたのか、体いっぱいに寂しさを漂わせている。
 栗崎は迷路を歩む男の後ろ姿に、妙に懐かしさを感じていた。




 (俺がいる!)





 (正しく俺だ)





 栗崎は、そこにもう一人の自分を探していた。






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