愛しい子

不完全のまま進む

最近生理が止まった。

といっても、一週間遅いだけ。

でも今まで規則正しく生理が来ていた私にとって、それは少し不安に思えるものだった。


叔母である恵里佳(エリカ)さんに相談したところ、「もしもを考えて私の病院に来なさい」と言われた。

その時初めて知ったが、恵里佳さんは産婦人科のお医者さんらしい。


まさか、ないない。

だってちゃんとコンドームつけてやったし。


そんなことを考えていたが、やっぱり不安はあるので行ってみる。




すると結果が出たらしく、恵里佳さんが診察室に戻ってきた。


「亜久里」

「はい」


恵里佳さんは笑ってた。

なんだ、やっぱり違ったんだね。
















「妊娠してます」

「…………」


「妊娠してます」

「……まじすか」



冗談?と聞きたかったが、やめておいた。

こんな場所でそんな悪質な冗談言うほど恵里佳さんは子供っぽくない。

むしろお医者さんになれるほど大人な女性だ。


本当だということがわかり、私は軽くパニックになった。


「え、うそ……え?」

「んー、ただまだはっきりとはわからないわ。また一週間、二週間後に検査するから」


さっさと話をする恵里佳さんを止め、恐る恐る訊いてみる。


「……私がわかるように教えてください」


恵里佳さんは軽くため息を吐くと、机の方に向けていた体を私の方へ移した。



「あのね、本当はまだ妊娠したとは決まってない。尿検査では陽性だったけど、超音波の検査では胎のうはみられなかったの」

「胎、のう?それが見られるのはいつくらいなんですか?」

「胎のうは赤ちゃんを包む袋よ。これは妊娠五週目にみられるわね」

「わ、私今何週目ですか?」

「生理はいつからきてないの?」

「え、予定日からは一週間くらい過ぎてます」

「じゃあ四週あたりね」


よ、んしゅー……!?


「まだわからないって言ったでしょ?だからまた来て検査する。次はお母さんを連れてきなさい」

「……は、はい」
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