音楽の女神〜ピアノソナタをあなたに
「まぁね。
マチルダ先生自身もすごいピアニストなわけだし、レッスンの人気があるのもそれだけ実のある内容になるからなんだよね」

セアラの意見に納得しながらも、エマは「それでも、わたしはブラウン先生でよかったと思ってるけど」と冗談めかして付け足した。

オスティア音楽学院のピアノ講師の中でも特に厳しいと有名なマチルダ・シンプソン。

そして、エマのピアノ講師ブラウン・コーウェルは、その正反対と言っていいほど温厚な性格をしている。

優秀な音楽家達ばかりを講師に迎える、ここオスティア音楽学院は、世界の中でも名門中の名門といえる音楽学校だ。

毎年世界中から、とてつもない倍率になる試験を勝ち抜き、素晴らしい才能を持った学生達が入学する。

世界で活躍する音楽家になることを目指す者にとって、まさに憧れの学校といえるのだ。



「そういえばセアラ、この前のコンクール惜しかったね」

「え、もしかしてエマ見に来てたの?」

「もちろん。コンクールは出るだけじゃなくて、見学することもいろんな意味でいい勉強になるしね」

「そっか。でも、それなら声掛けてくれればよかったのに」

「あ〜…うん、そうだよね…」
< 20 / 27 >

この作品をシェア

pagetop