紅蓮の鬼


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――…………


「このままじゃ本当に――」


鳥鬼の飛屋久(ヒヤク)が話している最中、何かに気づいたように言葉を切った。


そして遠くを見て、鎖骨を越すくらいの白く長い前髪と横髪を耳にかける。


どうやら耳をすませているようだ。


ここにいる誰もが怪訝そうに彼を見る。


「…………………」


飛屋久は眉を顰めた。


「声がする。ざっと十くらい」


鳥鬼は耳がいい。


耳をすませば五キロくらいは優に聞こえるだろう。


「十?」


水陰が眉間にシワを寄せた。


使いにしては多すぎるのだ。


それに、動物たちがここに向かってきているのだとしても、数が少なすぎる。


「……………………」


ある仮説が頭に浮かんだワタシは、それを確かめてみる為に外に出てみる。


ザァア…と風が匂いを運んだ。


――やはり


「思った通りだ」


ワタシは、ふっ、と口角を上げる。


「え?」


水陰がキョトンとした表情を見せた。


学校と呼ばれる場所で幾度とも嗅いだことのある匂い。


「これは人間だ」


そしてワタシは苦い表情を浮かべた。




< 467 / 656 >

この作品をシェア

pagetop