紅蓮の鬼


「十六方位に三、四人ずつ。鳥鬼の里は誰もいない」


空木は肩で息をしながら言う。


「………………」


ワタシはそれを聞いて、小さく舌打ちをした。


そして片膝立ちをした小鬼に言う。


「紫鬼の桜(さくら)に伝えろ」


桜というのは紫鬼の女長。


因みに、彼女は容姿端麗であれば男女問わず誘惑し同衾する淫乱だ。


「おまえの力で、すぐに鬼蜘蛛で落ち合えと我ら同胞に伝えろ、と」


「御意」


そう言って小鬼は、ワタシに一礼して駆けていった。


「先程言った通りだ。鬼蜘蛛に急ぐぞ」


ワタシは駒繋たちの方に向き直る。


まず散らばった仲間を一ヶ所に集めなければ。


ワタシは地面を蹴り、空木が鴉を飛ばした。




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