曖昧

 見知らぬ女を抱き上げると電車に乗り込んだ。

 影山には、目的の場所なんてない。

「どこまで帰るんだ」

 声を掛けても聞こえてくるのは寝息だけ‥‥‥

 困り果てた影山は椅子に女を横にすると

 自分の膝を枕にして寝かしてやった。

 膝の上に温かい女の体温が伝わってくる。

 その寝顔をじっと見つめていた。

 綺麗にメークされていたはずの顔は剥がれ

 酷い状態

 それでも影山にはそれが逆に可愛く見えた。
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