危険な瞳に恋してる
「なんか、他にも、用があるのか、春陽?
 父さんの顔をずっと見てたって、面白い事は、何も無いぞ?」

 父さんは怪訝な顔で、わたしを見つめ返した。

「べえっつにぃ」

 こんな風に。

 父さんの顔をちゃんと見たのは、いつが最後だったろう?

 よくよく見れば。

 父さんは。

 いつもいつも、頭ごなしに自分の価値観を押し付けて来るけれど。

 本当に小さな子供だった時に比べて。

 ちょっとだけ……

 小さくなってしまったような気がした。

「……父さん……実は……年、とった?」

「何を、藪から棒に言っているんだ?」

 やっぱり、怪訝な顔をしている父さんに。

 わたしは「べっっつにぃ」と笑って手を振った。
 
「本当に、なんだ?
 なんだか、久しぶりにお前の笑い顔を見たような気がするぞ?」

「なんでもないわよっ!
 バイト、許してくれて、ありがとっ!」

 面食らったようにぼんやりしている、父さんをほっといて、わたしはさっさと部屋に戻った。





 にゃー



 部屋に入ったとたん。

 らいむが、嬉しそうに寄って来た。

 そんな、子猫を抱き上げて、わたしは、囁く。

  
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