危険な瞳に恋してる
 今まで。

 ちっとも気がつかなかったけれど。

 ……先生の声は、こんなによく通る。

 決して、大声を出しているわけじゃないのに。

 一番後ろのわたしの所まで、ちゃんと授業の内容が、届く。

 ……別に。

 昔。

 日本でどんな事が起こったか、なんて、興味なんか無かった。

 面倒くさい年号なんてなおさら。

 覚える気も無かった。





 だけど。





 村崎先生の声は。



 いつまででも聞いていたい気分になるから……不思議だった。




 ねえ。



 本当に、不思議……



 ……なんで?


 村崎先生の声で。

 半分夢見心地だった気分は。

 やっぱり、村崎先生の言葉で、破られた。

「……これから、抜き打ちテストをします」

 ………は?

 なんで!

 わたしだけじゃない。

 突然の村崎先生の宣言にクラスが、ざわついた。
< 68 / 313 >

この作品をシェア

pagetop